中古のEVが激安で売られている?!中古EVの価格大暴落のワケ。

走行中に二酸化炭素を排出しないEV(電気自動車)は、地球温暖化対策の1つとして普及が推進されています。

しかし、そんなEVの中古車価格が大暴落していることをご存じでしょうか?

なぜそんなに価格が下がっているのか、今回はそのワケを探ってみます。

中古EVの価格が暴落?!相場はどれくらい?

代表的なEVの中古車価格をチェックしてみましょう。本当に暴落しているのでしょうか?

2019年4月現在の価格を調べてみました。

 

日産リーフ

・2010年モデル(新車価格273~456万円)

2011年式 38.9万~114万円

2012年式 31.3万~99.9万円

2013年式 54万~128万円

2014年式 62.6万~113.4万円

2015年式 77万~239.8万円

2016年式 93万~208万円

2017年式 129.9万~280万円

・2017年モデル(新車価格324~472万円)

2017年式 198.8万~258万円

2018年式 194.4万~295万円

2019年式 337.6万~399万円

(価格.com調べ)

 

三菱i-MiEV(新車価格226~398万円)

2009年式 38万~68万円

2010年式 39.8万~113万円

2011年式 59.9万~85万円

2012年式 54万~109.8万円

2013年式 79万~120万円

2014年式 100万~123万円

2015年式 129.8万~139.8万円

(価格.comカーセンサー調べ)

 

BMW i3(新車価格543~647万円)

2014年式 189.9万~298万円

2015年式 188万~259万円

2016年式 225万~298万円

2017年式 278万~360万円

2018年式 268万~398万円

(価格.com調べ)

 

リーフやi-MiEVの古い年式では30~40万とかなり安くなっているものが見られます。また、リーフの1年落ちは新車価格の約6割、i3は約半額まで値下がりしているものもあります。確かに価格の下落が顕著です。

中古EVの価格が暴落しているのはなぜ?

中古EVの価格がここまで大きく下落しているのはなぜなのでしょうか?以下のような理由が考えられます。

バッテリー性能の劣化

一番大きな原因は、EVにとって非常に重要な心臓部ともいえる、バッテリー性能の劣化です。劣化すると航続距離が少なくなります。

EVのバッテリーは、携帯電話などのバッテリーと同じように、使っているうちに劣化していきます。充電の方法や頻度、使用環境などによって劣化のスピードが異なるため、単純に走行距離や年式だけでどれくらい劣化しているかは判断できません。

リーフの場合は、バッテリー残量計の横にある容量計の目盛り(セグメント)で、状態を確認することができます。中古車の説明に、「1セグ欠け」「11セグ」などと書かれているのはこの表示のことです。新車の状態では12セグメントで、劣化が進むと1セグずつ欠けていきます。

10セグ(2セグ欠け)の表示

ただし、同じ10セグでも11セグに近いのか、9セグに近いのかまでは分かりません。いずれにせよ、新車より劣化していることは確かです。

ガソリン車でも、乗っているうちに燃費性能は悪くなりますが、オイル交換などの整備で新車に近い状態まで回復させることが可能です。しかし、一度劣化したEVのバッテリーは回復できません。

中古EVの購入にあたっては、この劣化具合に対する不安がネックになるのです。

バッテリーの交換費用が高い

バッテリーの劣化が進んだ中古EVを買ってしまうと、すぐにバッテリー交換が必要になる可能性もあります。保証がなく全額自腹で交換する場合にかかる費用は、リーフで60~70万円ほどです。30~40万円の激安中古車より高いのです。

せっかく車両を安く買えても、高いバッテリー交換費用が必要になるかもしれないことを心配して、購入をためらう人もいるでしょう。

中古車より新車を選ぶ人が多い

EVに興味を持つ人の多くは、自宅に充電設備を設置できる駐車スペースがあり、高額な新車を購入できる経済力がある富裕層だといわれています。そのため、バッテリーの劣化に不安がある中古車をわざわざ買おうと考える人は少ないようです。

また、新車には手が届かないが、安い中古車なら買えるという層の人たちにもあまり人気がないようです。

EVはまだ普及率が低く、充電方法や充電場所、航続距離、性能などがよく分からないという人も少なくありません。そのため、いくら安くてもなかなか購入の選択肢に入らないのです。

自宅に充電設備を設置できないという理由で、EVの購入をためらう人が多いというデータもあります。自分の行動圏内に充電設備があれば、必ずしも自宅に充電設備がなくてもEVには乗れますが、「走れる距離が短い」「すぐ充電切れになるのではないか」といった不安がなかなか払拭できないのでしょう。中古ならなおさらです。

補助金で新車のEVの実質価格が安くなっている

新車のEVを購入すると、国から「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」がもらえます。加えて自治体からも補助金がもらえる地域もあります。数十万円の補助金がもらえるぶん、新車の実質的な購入価格が安くなっているのです。

例えば、リーフXの新車を購入する場合、国からの補助金が40万円と、各自治体からの補助金がもらえます。

福岡県行橋市なら15万円、東京都江東区なら10万円です。

行橋市の補助内容

リーフは電気自動車で、新車価格が300万円超なので、上限の15万円です。

江東区の補助内容

新車価格が324万円とすると、国からの補助金40万円と自治体からの補助金を引いて、行橋市なら269万円、江東区なら274万円が実質的な購入価格というわけです。(オプション等の諸経費は別)

ですから、この実質価格と比較して、中古相応の安い価格でなければ、中古車を買うメリットはありません。少しだけ安くなっている程度なら、新車のほうが良いと考える人が多いでしょう。

1年落ちの中古EVの価格が大きく下がっているのは、この補助金が原因と思われます。

充電に時間がかかる

中古車だけのデメリットではありませんが、EVは充電に時間がかかります。この点も、人気が出ない一因のようです。

車種や充電設備により多少違いはありますが、EVは急速充電でも30~40分程度の時間がかかります。充電スタンドに先客がいれば、待ち時間も合わせて1時間以上かかる場合もあるということです。また、普通充電でフル充電するには4~28時間もかかるのです。

それに対して、ガソリン車の給油にかかる時間は5分程度です。

また、充電スタンドも普及してきたとはいえ、ガソリンスタンドに比べるとまだ少ないですし、地域差もありますから、不便に感じることがあるかもしれません。

新型の登場

EVは、航続距離や充電時間など、まだまだ課題のある車です。今までに販売されてきたEVも、モデルチェンジを繰り返して技術が進化してきました。

例えば、リーフは2010年に発売された初代では200kmだった航続距離が、280km、400kmと伸び、2019年1月発売のe+では570kmにまで伸びました。搭載するリチウムイオンバッテリーの容量を、24kWh、30kWh、40kWh、62kWhとアップさせ、航続距離を伸ばしてきたのです。

このように大きく進化した新型が登場するたびに、旧型の価値は大きく下がってしまいます。

数年落ちのEVに乗っていて、買い替えを検討している人は、早めに売ったほうがいいかもしれません。

激安の中古EVは買うべき?避けるべき?中古EVに向いている人とは

中古EVの価格が激安になっているのは、EV特有の様々な原因があることが分かりました。

では、激安中古EVは、買っても大丈夫な車なのでしょうか?買うべきか避けるべきか、激安になるだけのデメリットを踏まえて検討するべきです。中古EVはどんな人に向いているのでしょうか?

短距離の移動に使いたい人

中古EVは、近所の買い物や通勤、通院、子供の送り迎えなど、短距離の移動が中心という人に向いています。

30~40万円程度で販売されている激安リーフだと、フル充電で走れる距離は80kmぐらいだといわれています。これをどう考えるかは人それぞれです。

1日に走る距離が10~30km程度で、1週間に1~3回充電すれば問題なく乗れるなら、悪くないと考える人もいるでしょう。

「安いし、バッテリーがダメになるまで乗って買い換えればいい」という考えも、ありかもしれません。

逆に、長距離を走ることが多い人は、絶対に避けるべき車です。

ガソリンスタンドの過疎地に住んでいて、自宅に充電設備を設置できる人

近年、需要の減少や後継者不足などにより、ガソリンスタンドが減り続けています。ガソリンスタンドがまったくない、または1~3か所しかない市町村が300以上あるのです。このような「SS過疎地」でガソリン車を利用している人は、給油のためにわざわざ遠くまで走らなければならず、時間もガソリンも消費するので大変です。

EVなら、この問題を解決できます。自宅に充電設備を設置して充電できるようになれば、遠くのガソリンスタンドまで行く必要はありません。とはいえ新車は高くて買えない・・・という人には、中古EVはお買い得ではないでしょうか。

ただ、フル充電で80kmぐらいしか走れないようなEVでは不安という人もいると思います。過疎地だと車を利用する機会も多いでしょうから、予算と相談して、バッテリーの保証が付くディーラー系販売店で、なるべく高年式で劣化が少ないEVを探すのがおすすめです。

時間と心にゆとりがある人

中古車だけではありませんが、EVは時間と心にゆとりがある人に向いているといわれています。

上述したように、充電に時間がかかりますし、充電スタンドで先客がいたら待たなければいけないからです。

また、EVはガソリン車以上に安全運転を心がける必要があります。電気の消費を抑えて、なるべく長く走れるようにするには、スピードを出しすぎず、急発進、急ブレーキをできるだけ避けたほうが良いのです。さらに、EVは音が静かで気付かれにくいため、歩行者や自転車により注意しなければいけないという理由もあります。

時間に余裕がなく、いつもせかせかしている人は、今までよりゆとりを持てるように変わる必要があるでしょう。

ただ、EVに乗り換えると、自然と適応できる人も多いようなので、あまり気にしなくても大丈夫かもしれません。

中古のEVが激安で売られている?!中古EVの価格大暴落のワケ。

中古EVが激安で売られているのには、それなりのワケがありました。今後も価値が上がる可能性は低いでしょう。ですが、その激安のEVに向いている人にとっては、お買い得な車でもあります。

誰にでもすすめられるものではありませんが、「自分に合っているかも」と思った人は検討してみてもいいかもしれませんね。

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