EV充電器に違いがある?メーカーごとの比較

電気自動車(EV)には充電が必要で、その為に様々な場所で電気を供給するEV充電器があります。

EV自動車が発展すると同時に近年、各メーカーがこぞってEV専用の充電器の開発・サービスの提供に踏み込んでいます。

すなわち、各メーカーが製品化する数だけEV充電器があるという事ですが、果たしてそのEV充電器達には違いがあるのでしょうか?

EVの開発とEV充電器はお互いに仲良きライバルのように性能を上げながら、両方とも数を増やし続けています。

EV充電器メーカー自体の数は飽和状態だそうですが、今回はそのメーカーごとの違いを比較してみようと思います。

EV充電器はすべて同じ? 違いがある!?

EV充電器はすべて同じようなものかと言うとそうではありません。

EV充電器は普通充電器急速充電器に大きく分けることができます。

送電線からの電源はすべて50ヘルツ(Hz)か60ヘルツ(Hz)の交流の電流です。だからどちらのEV充電器も電源は交流(AC)になります。

普通充電と急速充電で使う電源が違う

EV普通充電器は、単相交流(AC)の100Vか200Vの電源を使用して、アンペア(A)数は通常30A以下の仕様のようです。

充電出力は1.6kWや3.2kWなど、単位がkWで一桁の数値になり、20Aで200Vの場合は、20A X 200V = 4kWとなります。

単相交流100Vは一般家庭で普通に使われているので、自宅の車庫に取り付けることができます。

普通充電器は充電に時間がかかる(フル充電まで約8時間~14時間ほど)ので、自宅で安い深夜料金を利用して充電するのに向いています。

 

EV急速充電器は、単相と三相の交流200Vの電源を使用し、三相の交流200Vが広く使われています。

充電出力は10kWから200kW(400A/500V)まで可能になりました。

50kWまで仕様の急速充電器が普及しています。

今後は充電時間の短縮が実現

ガソリン車の給油時間に慣れていると、EV充電器の充電スピードがもっと速ければと思われるでしょう。

EV充電器を製造する技術は、日々進歩して性能は向上しています。

2020年の完成を目指して充電出力が350kWの充電器を開発中です。

出来上がると電気自動車に充電する時間が、ガソリン車の給油時間とほぼ同じ約5分とずいぶん短くなります。

普通充電器は2種類の型がある

急速充電器は自立スタンド型ケーブル付のタイプのみですが、普通充電器は自立スタンド型ケーブル付とコンセント型の2種類の充電器タイプがあります。

 

コンセント型は,さらに差し込み口の形状が違うことで、新しい平刃タイプと従来の引掛けタイプとに分けられます。

 

<スタンド型ケーブル付>

 

 

<コンセント型>

充電出力が小さいほど充電時間は長くなりますが、それぞれのEV充電器には様々なシーンに適した使い方があります。

お茶をしている間に充電しょうとか、美術館で絵を見ている間に充電しておこうなど、いろいろ思い描いてみるのも楽しいかもしれません。

メーカーの得意な充電タイプは?

2018年10月末時点でのEV充電器の全国設置数(ゼンリン調べ)です。

 約29,700基

  • 普通充電器 22,100基
  • 急速充電器 7,600基

 

設置数が急速充電器よりも多い普通充電器ですが、生産しているメーカーの数は急速充電器の方が多い状況になっています。「新電元工業」と「九電テクノシステムズ」、「デルタ電子」の三社は両方を生産しています。

 

NECは急速充電器を扱わなくなり、現在は普通充電器のみになっています。

他方では生産をすべて終了してしまったメーカーが数社あります。

やはりメーカーの数は飽和状態なのでしょうか。

これからも電気自動車は増え続けていくでしょうから、EV充電器の需要も増えると予想できるので、メーカーの状況も変わって来るように思えます。

 

EV普通充電器メーカー

メーカー名    入力   最大電流    出力
日東工業 単相100V/200V    16A 1.6kW 3.2kW
新電元工業 単相200V 20A(18A) 4kW(3.6kW)
九電テクノシステムズ 単相100V/200V        15A     1.5kW,3kW
NEC 単相200V 30A 6kW
デルタ電子 単相200V 24A,30A 4.8kW,6kW
矢崎総業     単相200V   15A 3kW

 

日産自動車製のEV充電器も生産を終了しています。

電気自動車に充電できるようにEV充電器を用意している日産の販売店では、事前に連絡しておくと使用できます。

先着順なので、予約はできません。

普通充電は日産車のみの対応です。急速充電はCHAdeMO急速充電器に対応した車になります。

充電時間は販売店の営業時間内でのみです。

 

EV急速充電器メーカー

メーカー名 入力 最大電流 出力
ニチコン 単相200V三相200V 20A,40A,60A,100A 10kW,20kW,30kW,50kW
東光高岳 単相200V三相200V 50A,75A,125A 20kW,30kW,50kW
JFEテクノス 三相200V 125A 50kW
GSユアサ 三相200V 50A,75A 19kW,30kW
シンフォニアテクノロジー 三相200V 125A 44kW
デンゲン 単相200V 25A 10kW
デルタ電子 三相200V 65A        25kW
NTTファシリティーズ 三相200V 50A,75A,100A,125A 20kW,30kW,40kW,50kW
サイカワ 直流(DC)324V 20A 10kW
キューヘン 三相200V 75A        30kW
九電テクノシステムズ 三相200V 50A,105A,125A 20kW,42kW,50kW
新電元工業 単相/三相200V三相415V±15% 50A,75A,125A,200A 20kW,30kW,50kW,90kW
日立製作所 三相210V 75A(未確認),125A 30kW,45kW
日鉄住金テックスエンジ 単相200V三相200V 40A,60A,125A 単相20kW,30kW三相50kW
ハセテック 単相200V三相200V 65A,110A 25kW,44kW

 

急速充電器は車載バッテリーと会話をするかのように(?)通信をしながら適切な充電を行います。
バッテリーは、少ない時は電圧が低くフル充電になってくると高くなるので、バッテリーの電圧に合わせて電力を供給しています。

 

上の表を見ると、例えば急速充電器で電源から入力の電圧が200Vで最大電流が125Aなのに充電出力が50kWでは計算が合いません。

普通充電器の場合は、例えば 200V x15A = 3kW とピッタリ計算が合います。そして電源から入力した時と同じ交流で充電出力しています。

急速充電器の場合は、そのままでは200x125A=25kWで出力は半分しかありません。この足りない分を足りるようにしているのが、急速充電器の内部にあるコンバーター(変換装置)です。

コンバーターは三相交流200V ➡ 直流360Vに変換し、さらに直流360V ➡ 直流50~500Vというように変換しています。

電圧が上がれば充電出力もあがるので、400Vx125A=50kWと、最初の200Vを400Vに昇圧しているのです。

 

急速充電器は充電ケーブル付ですが、普通充電器は各メーカーによって充電ケーブル付かコンセント型または両方を生産しているかの違いがあります。

 

普通充電器メーカー

・日東工業:ケーブル付、コンセント型

・新電元工業:ケーブル付

・九電テクノシステムズ:コンセント型

・NEC:ケーブル付

・デルタ電子:ケーブル付

・YAZAKI:ケーブル付

 

急速充電器も生産している新電元工業は、2018年12月11日に充電出力が90kWの新製品を販売開始しました。

従来の急速充電器(50kW)と比較すると1.8倍の充電出力に対応しています。

計算では充電時間が半分近く短縮されるということになります。

メーカーをピックアップ

それでは次に、気になるメーカーを何社かみていきたいと思います。

JFEテクノス

  • JFEテクノスは「RAPIDAS(ラピダス)」という名のEV急速充電器を生産しています。

蓄電池を内蔵していて、充電をアシストしています。

急速充電器には、高圧受電契約(50kW以上)が必要ですが、ラピダスは蓄電池の電力と受電電力を一緒にして電気自動車に充電するため、安い低圧受電契約のまま、50kW出力の急速充電器の設置が可能になります。設置費用も安くなります。

 

超急速充電器「スーパーラピダス」は、電気自動車に8分で80%の充電が可能です。

そしてさらに速い、わずか3分で充電できる超急速充電器も開発中です。

 

停電した時はラピダスを電力の供給源として利用できます

一般家庭の一日に必要な電力は約12kWhです。

ラピダスは電源からの入力が単相交流100Vと200Vがあり、どちらも充電出力が50kWですが、単相100Vタイプに蓄電池が内蔵されていて、容量が12kWhなので一般家庭の一日分と同じになります。

ラピダスに付いている単相100V(一般家庭と同じ)のコンセントから内蔵蓄電池の電力を使えるのです。

・ノートパソコン:18台X12時間

・携帯電話:1,350台分

・照明:2基X 90時間

EV充電器ラピダスは困っている時に助けてくれます。

デンゲン

  • デンゲンは充電出力10kWで移動式の急速充電器を製造しています。

底部の四隅付近にキャスターが取り付けてあり、車輪を転がしながら移動します。

充電器の方から車に近づくことができます。

入力ケーブルが10mで出力ケーブルは4mになります。

サイカワ

  • サイカワも同じ移動式の急速充電器ですが蓄電池を内蔵しています。

それにより電源がなくても動作が可能になります。

軽自動車にも車載可能なので、他の電気自動車が電欠の時には、「助っ人EV」に早変わりして電気を積んで駆けつけます。

EV充電器とメーカーのあれこれ・・・

ほとんどすべてのメーカーがEV充電器を製品化する上で行なう共通の仕様があります。この共通の仕様はEV充電器の性能としての“必須条件”ともいえるでしょう。内容は下記の通りです。

 

  • 漏電遮断器を搭載
  • 防塵、防水の機能
  • 感電、過電流保護機能
  • 寒冷地対応 -10/-20~+40℃
  • 周囲湿度対応 20/30~80/90%

 

EV充電器の、ほぼすべての器種がこのような仕様になっています。

メーカーの事故防止への対策は,基本で必要不可欠です。これを怠ってしまうと大変な事故へとつながり人命にも関わってきます。

安心して充電するためにも重要な仕様です。

普通充電、急速充電の設置分け・使い分け

一般的に普通充電器は一戸建て自宅やマンションの駐車場、宿泊施設などが適していて、急速充電器は出かけて行った先々のどこでもと言う感じでしょうか。

2018年10月末時点での急速充電器の主な設置場所(ゼンリン調べ)として、

・コンビニ 約 1,040 基

・商業施設 約 900 基

・道の駅 約 860 基

・高速道路 約 410 基

・自治体 約 46 基

となっています。

旅先、外出先でふらっと寄ったついでの充電で何時間も待たされるのは不便ですよね。そういった場所においては断然、急速充電器のニーズがあるという事でしょう。

まとめ・・・EV充電スポットが普及する未来

政府はすべての道の駅約1,100箇所にEV充電器を設置していく予定のようです。

いろんな場所に設置が進み自宅でも充電できて、ガソリンスタンドとは違う広がり方をみせているEV充電器を、これからも電気自動車と共に増え続けるだろうと多くの人が予測しています。

いつでも、どこでも、簡単に充電、の時代が近づいているのでしょう。

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