大気汚染やオイルショック、また近年ではCO2排出による地球温暖化や石油枯渇問題など、様々な問題を背景に開発が進められてきた電気自動車(EV)
過去にはバッテリーの性能の低さやインフラの不足により実現化が危ぶまれていましたが、近年では目覚ましい発展を遂げています。
では、これからのEVはどんな進化を遂げるのでしょうか?
また、トヨタがFCV(燃料電池自動車)の開発を進めているその理由は一体何なのでしょうか?
進化を続けるトヨタのEV
これまでの一般的な自動車は、皆さんご存知の通りガソリンを燃料として走行しています。
しかし、ガソリンを燃焼するとCO2やその他有害物質を排出してしまい大気汚染の原因の一つとなっていました。
そこでトヨタは、環境への貢献のために省エネ化や有害物質の排出を抑える技術開発を進めてきました。
そこには「普及してこそ環境への貢献」という理念があったからこそ。そして誕生したのがEV(電気自動車)です。
EVは外部から充電した電気を動力とし、モーターによって駆動するのでCO2排出量がゼロ!これからの時代を支えてくれる夢のエコカーです。
しかも今までエンジンを置いていたスペースが不必要になるため、車体を小型化することが出来ました。
トヨタではバイクのような使い勝手のいい三輪自動車i-ROADと、コンパクトなボディーにもかかわらず大人4人が乗れるeQを展開中。小回りがきいたり、1台分の駐車場スペースに複数台置けたりと車が多く、土地の狭い都市部では、かなり使い勝手の良い車が開発されました。
しかし、EVには大きな問題点があります。それは、走行距離の短さと充電時間の長さです。
現在発売されているPHVプリウスのEV走行距離は、1回の充電で68,2キロ(トヨタ発表)
自宅から会社までの往復だったり、ちょっと街までお買い物、なんて使い方だったらいいかもしれませんが、遠距離走行には向きません。
もちろんハイブリットカーなので充電がなくなってモーターが止まっても、エンジンで走ることが出来ますが、やはりガソリンのお世話になってしまいます。
また充電も、自宅で一般の100Vのコンセントに繋ぐことはできますが、フル充電するのに約14時間(トヨタ発表)もかかります。200Vのコンセントに繋げば約2時間20分(トヨタ発表)でフル充電できますが、そのためには家の配線工事が必要になります。
さらにお出かけ先で充電する場合、公共施設や高速のサービスエリアなどにある充電器を利用できますが、バッテリー容量の80パーセントほどを充電するのに、急速充電器を使っても約20分(トヨタ発表)はかかり、ガソリン車のようにスタンドに寄って缶コーヒーをちょっと飲んでいるうちに給油完了!というような手軽さには程遠いようです。
それでもPHVプリウスの登場で、CO2の排出量は大幅に軽減することが出来ました。そしてPHVの登場で更なる低燃費化を実現。今後もエンジンの燃費性能の向上、電力を無駄なく動力に変えるモーターの開発は続いていくことでしょう。
究極のエコカーとも言えるFCVへのこだわり
現状のPHVは、いわばEVとガソリンエンジン車の短所を補い合うかたちで走っています。
しかし、これではCO2の排出量をゼロにすることは出来ませんし、環境汚染、化石燃料の枯渇問題も残されたままです。何といっても、EVの走行距離の短さ、充電時間の長さの根本的な解決にはなっていません。
そんな中、トヨタがこれらの問題を解決する
「究極のエコカー」として開発してきたのが
水素を使って走るFCV(燃料電池自動車)です。
トヨタが開発したFCV(MIRAI)は水素と酸素を化学反応させ、そこで得られた電気をモーターに送り車を動かすというもの。
車から排出されるのは化学反応で生成された水のみです。このFCVの開発には、トヨタの並々ならぬ思いとこだわりが垣間見られます。
そもそも開発が始まったのはプリウスよりも古い1992年。なんと燃料電池の作り方から作るという途方もない作業からのスタートでした。それでもMIRAIの開発にこぎつけたのは、開発者たちの「地球環境を守る」という強い思いがあったからこそ。そんなFCVには様々なこだわりが。
多くの可能性を秘めたクリーンエネルギー「水素」の活用
水素の一番の特徴は、そのクリーンさ。化学反応を起こしても出来るのは水のみ。CO2を一切出しません。またその量の豊富さも特徴。水素は様々な一次エネルギーから作り出すことが出来るので、化石燃料のような枯渇の心配がなく安定した供給ができます。また、精製された水素は貯蔵も運搬も簡単に出来るので、ガソリンのように各地へ運ぶことも出来ます。そして何より、EVの課題であった、走行距離と補給時間。わずか3分程の充填時間で、650キロの走行が可能(JC08モード走行パターンによるトヨタ測定値)となり、この問題もクリアしました。
乗り心地や、デザインなどの走りの楽しさ
いくら地球環境にやさしいからといっても乗り心地や、デザインが悪ければ、購入を考えてしまいますよね。何てったって「エコカーは普及してこそ環境への貢献」ですから。もちろんここにもトヨタのこだわりが。モータードライブと緻密な走行設計により、加速はパワフルかつ滑らか。さらに燃料電池ユニットを床下に搭載したので車内は広く、また重心が下がり安定した走行ができます。そしてなんと言っても車内の静粛性。これはモータードライブならではですね。ボディーは、FCVに必要な前面の大きなエアインテイクや、空気抵抗などを抑えるのに必要な形を上手くデザインに取り入れた、未来感溢れるものとなっています。
非常時の電源供給が可能
トヨタのFCVは、水素と空気の化学反応で大きな電力が生まれます。この電力は、たとえば、災害などで停電したときに発電機としても活躍します。車内のアクセサリーコンセントに直接家電をつなぎことも出来ますし、住宅の電気配線工事を行えば住宅に電気を供給することもできます。災害の多い日本では、非常にありがたい機能ですね。ここにもトヨタのこだわりが見えます。
水素に対する安全基準
水素は燃えやすい気体です。なのでガソリンと同様安全に扱わなくてはなりません。そのために安全対策の基準作りを1から徹底的に考えました。仮に事故を起こしても壊れにくい水素タンクの設計や配置、水素が漏れた時の遮断方法、漏れた水素が車内に溜まらないようにする車の設計など、ありとあらゆる危険の可能性について考え抜いています。
リサイクルの取り組み
FCV(MIRAI)は、発売当初から使用済みバッテリーや水素タンクなどの適正処理や再利用化を考えて生産されています。自動車解体事業者あてに「適正処理関連マニュアル」まであるんですから環境に対するトヨタの本気度が伺えます。
FCV普及のための今後の課題
トヨタの環境技術の粋を集めて創られたFCV。文字通り究極のエコカーであることは間違いありません。
ならば一刻も早く普及を!と思うのですが、まだ問題があります。
それはインフラである水素ステーションの数です。
大都市近郊には多少はありますが、それでもまだまだ少なく、地方によっては1か所もない県もあったりします。(!)
水素ステーションがなければFCVは買えませんし、逆にFCVを買っても水素ステーションがなければ乗れません。また水素ステーションを整備するのには大変な時間と費用が掛かります。
広く普及するまで先はまだ長い感じがしますが、このトヨタの技術者の熱い思いが早く日本全国に、ひいては世界に広がることを期待したいと思います。
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